太陽光パネル設置は「屋根工事」と「電気工事」どっち?建設業許可の判断基準を徹底解説

近年、住宅や事業所の屋根に太陽光パネルを設置する工事が増加しています。しかし、この工事を請け負う際に「屋根工事」と「電気工事」のどちらの建設業許可が必要なのか、判断に迷う方も少なくありません。この記事では、国土交通省の公式見解に基づき、屋根工事と電気工事の定義から、太陽光パネル設置工事の具体的な判断基準までを分かりやすく解説します。この記事を読めば、あなたの事業に必要な建設業許可を正しく理解し、安心して工事を請け負うことができます。最後に確認クイズを3問用意しおりますのでお試しください。
参考資料:国土交通省(H29年11月10日改正)業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方
目次
- 🏠 第1章:屋根工事の定義と具体的な工事例
- ⚡️ 第2章:電気工事の定義と具体的な工事例
- 💡 第3章:太陽光パネル設置工事の判断基準
- 🏗️ 第4章:ケース別!太陽光パネル工事の業種当てはめ
- ✅ まとめ:正しい許可で信頼される事業を
- 確認テスト(太陽光パネル設置工事)
第1章:屋根工事の定義と具体的な工事例
法律で定められた屋根工事の範囲
建設業法における屋根工事とは、「瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事」と定義されています。この定義には、屋根を葺くための材料の種類を限定する意図はなく、これら以外の材料を使用する屋根工事も含まれます。
国土交通省のガイドラインによると、「屋根ふき工事」は、屋根断熱工事(断熱処理を施した材料で屋根をふく工事)も含まれるとされています。重要なのは、「屋根」を「ふく(覆う)」という行為です。
該当する工事と非該当な工事の事例
屋根工事に該当する具体的な工事には、以下のようなものが挙げられます。
【屋根工事に該当する工事例】
- 瓦、スレート、金属板による屋根の葺き替え工事
- 板金屋根工事
- 屋根を金属薄板で覆う工事は、板金工事ではなく屋根工事に分類されます。
- 屋根断熱工事
- 断熱材入りのパネルなどを使用して屋根を覆う工事です。
一方で、屋根工事とは明確に区別される工事もあります。
【屋根工事に非該当な工事例】
- 外壁にスレートを張る工事
- これは「タイル・れんが・ブロック工事」に該当します。
- 屋根の防水処理のみを行う工事
- アスファルトやシーリング材を用いて防水を行う工事は、「防水工事」に該当します。
- 屋根の塗装工事
- 塗料を塗る行為は「塗装工事」に該当します。
【まとめ】 屋根工事の核心は、屋根を**「材料で覆う」**という行為にあります。屋根材の変更や断熱材の設置など、屋根そのものを形作る工事が屋根工事とみなされます。
第2章:電気工事の定義と具体的な工事例
法律で定められた電気工事の範囲
建設業法における電気工事とは、「発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事」と定義されています。これには、私たちの生活に欠かせない電気に関わる様々な工事が含まれます。
国土交通省のガイドラインでは、具体的な例として「発電設備工事」「送配電線工事」「ネオン装置工事」などが挙げられています。
該当する工事と非該当な工事の事例
電気工事に該当する具体的な工事には、以下のようなものがあります。
【電気工事に該当する工事例】
- 発電設備工事
- 太陽光発電設備の設置工事もこれに含まれます。
- 送配電線工事、引込線工事
- 電力を送ったり、建物に引き込んだりする工事です。
- 照明設備工事、ネオン装置工事
- 照明器具やネオンサインを設置する工事です。
一方で、電気工事と見なされない工事もあります。
【電気工事に非該当な工事例】
- エレベーターやエスカレーターの設置工事
- これらは「機械器具設置工事」に分類されます。
- 電話やインターネットの配線工事
- 「電気通信工事」に該当します。
- 火災報知設備の設置工事
- これは「消防施設工事」に該当します。
【まとめ】 電気工事は、発電や送電、電気設備そのものに関わる専門性の高い工事を指します。太陽光発電設備の設置も、このカテゴリに明確に分類されます。
他の29業種を確認されたい方は29業種全体の解説をご覧ください👇

第3章:太陽光パネル設置工事の判断基準
国土交通省のガイドラインによる明確な判断
太陽光パネルの設置工事は、「屋根工事」と「電気工事」が重複するケースであり、判断が難しいとされてきました。しかし、国土交通省のガイドラインでは、この点について明確な基準が示されています。
国土交通省の区分考え方(H29.11.10改正)
- 屋根一体型の太陽光パネル設置工事は、**『屋根工事』**に該当する。
- 太陽光発電設備の設置工事は、**『電気工事』**に該当する。
この2つのポイントをさらに掘り下げてみましょう。
1. 「屋根一体型」とは?
屋根一体型とは、屋根材そのものが太陽光パネルの機能を持ち、建物の防水機能も同時に担うものを指します。このタイプのパネルは、屋根を「ふく」という屋根工事の定義に合致するため、屋根工事の許可が必要となります。
2. 「太陽光発電設備の設置工事」とは?
一般的な太陽光パネルの設置工事は、既存の屋根の上に架台を設置し、その上にパネルを載せる形式です。この場合、パネル本体の設置や配線工事は、発電設備を設置する行為にあたるため、電気工事の許可が必要となります。
【まとめ】 工事の分類は、**「太陽光パネルが屋根材そのものか」**という一点で判断します。パネルが屋根の一部として防水機能を担う場合は「屋根工事」、既存の屋根の上に設置する場合は「電気工事」となります。
第4章:ケース別!太陽光パネル工事の業種当てはめ
ここでは、具体的な工事例を挙げて、どの業種に該当するかをさらに詳しく見ていきましょう。
工事の種類 | 工事の内容 | 必要な建設業許可 | 理由 |
屋根一体型パネルの設置 | 太陽光パネル自体が屋根材となり、防水機能を担う工事。 | 屋根工事 | 国土交通省のガイドラインにより、「屋根をふく」工事と明確に定義されているため。 |
既存屋根へのパネル設置 | 既存の屋根の上に架台を組み、パネルを設置・配線する工事。 | 電気工事 | 発電設備を設置する工事であり、電気工事の定義に該当するため。 |
パネル設置と屋根の防水処理 | 既存の屋根にパネルを設置する際、止水処理(コーキングなど)も同時に行う工事。 | 電気工事 | 太陽光発電設備の設置が主たる工事であり、止水処理は付随的な作業と見なされる。 |
屋根の葺き替えとパネル設置 | 屋根の老朽化により、既存の屋根を撤去し、新しい屋根材を葺いた後、パネルを設置する工事。 | 屋根工事 と 電気工事 の両方 | 「葺き替え」は屋根工事、その後の「パネル設置」は電気工事に該当するため。どちらか一方の許可だけでは対応できない。 |
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【まとめ】 単に「太陽光パネルの設置」といっても、工事の内容によって必要な許可は異なります。自社が請け負う工事がどちらに該当するのか、慎重に判断することが重要です。
まとめ:正しい許可で信頼される事業を
太陽光パネルの設置工事は、一見すると「屋根工事」と「電気工事」の両方の側面を持つように思えますが、国土交通省のガイドラインを読み解くと、その区分は意外と明確です。
- 屋根一体型パネルを設置する場合は、屋根工事
- 既存の屋根にパネルを載せる場合は、電気工事
がそれぞれ必要になります。
工事の規模が一定以上となる場合は、これらの許可なくして請け負うことはできません。無許可工事は罰則の対象となるだけでなく、顧客からの信頼を失うことにも繋がります。
この記事を参考に、自社の事業内容に合った建設業許可を正しく取得し、信頼される建設業者として事業を拡大していきましょう。許可申請に関してご不明な点があれば、お気軽に専門家である行政書士までご相談ください。
建設業許可全体の手続きを確認したい方
必要な手続き書類を確認したい方は
こちらの解説をご覧ください👇他の許可条件も完全ガイド

確認テスト(太陽光パネル設置工事)
太陽光パネル設置工事の許可クイズ
太陽光パネルの設置工事、どの許可が必要か判断できますか?
記事の内容を振り返りながら、3問のクイズに挑戦してみましょう!
【第1問】
太陽光パネル設置工事に必要な許可業種を判断する上で、最も重要な基準は何でしょう?
- 工事の請負金額の大小
- 工事を行う建物の種類(住宅か事業所か)
- 太陽光パネルが屋根材そのものか、既存屋根に設置するか
【第2問】
既存の屋根の上に架台を組み、その上に太陽光パネルを設置する一般的な工事は、どの許可業種に該当するでしょう?
- 屋根工事
- 電気工事
- タイル・れんが・ブロック工事
【第3問】
屋根の葺き替えと太陽光パネルの設置を同時に行う場合、必要な許可業種はどれでしょう?
- 屋根工事のみ
- 電気工事のみ
- 屋根工事と電気工事の両方