上下水道の建設工事はどの業種?管工事・水道施設工事・土木一式工事の判断基準を解説

上下水道の建設工事はどの業種?管工事・水道施設工事・土木一式工事の判断基準を解説
上下水道に関する工事を請け負う際、「この工事はどの建設業許可が必要なの?」と迷う建設業者の方は少なくありません。一口に上下水道工事といっても、工事の内容や規模、場所によって必要な許可業種が異なり、誤った許可で工事を進めると法律違反となるリスクもあります。
この記事では、国土交通省の資料に基づき、上水道・下水道に関する工事が「管工事」「水道施設工事」「土木一式工事」のどれに該当するのかを、具体的な事例を交えながらわかりやすく解説します。この記事を読めば、あなたの請け負う工事に必要な許可業種が明確になり、安心して事業を進めるためのヒントが得られるはずです。最後に確認クイズを3問用意しおりますのでお試しください。
参考資料:国土交通省(H29年11月10日改正)業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方
目次
- 管工事の定義と具体例
- 1-1. 💧管工事の法律上の定義
- 1-2. 🔧管工事に該当する工事
- 1-3. ❌管工事に該当しない工事
- 水道施設工事の定義と具体例
- 2-1. 🚰水道施設工事の法律上の定義
- 2-2. 🛠️水道施設工事に該当する工事
- 2-3. ⚠️水道施設工事に該当しない工事
- 土木一式工事の定義と具体例
- 3-1. 🏗️土木一式工事の法律上の定義
- 3-2. 🚧土木一式工事に該当する工事
- 3-3. ❌土木一式工事に該当しない工事
- 上下水道工事の判断基準を徹底解説!
- 4-1. 🏡公共と民間、工事場所で区分する
- 4-2. 🚰工事の規模・内容で判断する
- 4-3. 🤔迷いやすいケースの判断基準
- 事例で学ぶ!この工事はどの許可が必要?
- 5-1. 例1:公道下の水道管布設工事
- 5-2. 例2:下水処理場内の配管工事
- 5-3. 例3:民間の住宅敷地内の給排水管工事
- まとめ:上下水道工事の許可業種を正しく判断するために
- 確認クイズ(上下水道工事)
1. 管工事の定義と具体例
まず、上下水道工事を語る上で欠かせない「管工事」について解説します。
1-1. 💧管工事の法律上の定義
建設業許可における管工事とは、**「冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」**を指します。
簡単に言えば、建物内外で液体や気体を運ぶための「管」を設置・配管する専門工事が管工事です。この定義からもわかるように、管工事は上下水道だけでなく、ガス管や空調設備、消化設備など、幅広い分野にわたる工事を包括しています。
1-2. 🔧管工事に該当する工事
国土交通省の資料によると、管工事に該当する工事の例は以下の通りです。
- 冷暖房設備工事:エアコンや暖房設備の設置
- 給排水・給湯設備工事:建物内の給排水管や給湯器の設置
- 衛生設備工事:トイレや洗面台など衛生設備の設置
- 浄化槽工事:規模の大小にかかわらず浄化槽(合併処理槽を含む)を設置する工事
- ガス管配管工事:建物内のガス管を配管する工事
特に上下水道関連では、家屋や施設の敷地内の給排水管工事や、上水道の配水小管を設置する工事が管工事に該当します。
1-3. ❌管工事に該当しない工事
管工事と間違えやすいのが「機械器具設置工事」です。例えば、トンネルや地下道の給排気設備工事は、機械器具設置工事に分類されます。これは、建物内の一般的な空調機器と異なり、より大規模な機械器具の設置がメインとなるためです。
【まとめ】 管工事は、建物や施設の内部、あるいは敷地内で行われる「配管」を主体とした工事を指します。上水道の配水小管工事もここに分類されるのがポイントです。
2. 水道施設工事の定義と具体例
次に、上下水道工事の中でも特に大規模な工事が該当する「水道施設工事」について見ていきましょう。
2-1. 🚰水道施設工事の法律上の定義
建設業法における水道施設工事とは、**「上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事、または公共下水道もしくは流域下水道の処理設備を設置する工事」**を指します。
これは、取水場、浄水場、配水池、下水処理場など、大規模な水道施設の建設工事を専門とする許可業種です。
2-2. 🛠️水道施設工事に該当する工事
国土交通省の資料では、水道施設工事の具体的な例として以下が挙げられています。
- 取水施設工事:河川から水を取り込むための施設建設
- 浄水施設工事:水をろ過・消毒して浄水を作る施設建設
- 配水施設工事:浄水された水を各家庭へ供給するための配水池やポンプ場の建設
- 下水処理設備工事:公共団体が設置する下水処理場内の処理設備を築造・設置する工事
これらの工事は、上下水道のシステム全体を支える中核的な施設を対象としています。
2-3. ⚠️水道施設工事に該当しない工事
水道施設工事と間違えやすい工事には、以下のものがあります。
- 農業用水道やかんがい用配水施設工事:これらは水道施設工事ではなく、土木一式工事に該当します。
- 浄化槽の設置工事:規模の大小にかかわらず管工事に該当します。
- 汲取方式のし尿処理施設工事:こちらは清掃施設工事に分類されます。
このように、水の供給や処理に関わる工事でも、その目的や方法、規模によって分類が厳密に区別されているため注意が必要です。
【まとめ】 水道施設工事は、取水場や浄水場、下水処理場など、上下水道システム全体を構築する大規模な公共施設の工事を指します。
他の29業種を確認されたい方は29業種全体の解説をご覧ください👇

3. 土木一式工事の定義と具体例
最後に、「土木一式工事」について見ていきましょう。これは、複数の専門工事を総合的に管理・調整して行う工事が該当します。
3-1. 🏗️土木一式工事の法律上の定義
建設業法上の土木一式工事とは、**「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事」**と定義されています。
この定義のポイントは「総合的な企画、指導、調整」です。つまり、複数の専門工事(例:掘削、配管、舗装など)をまとめて請け負い、全体を管理する大規模な工事が該当します。
3-2. 🚧土木一式工事に該当する工事
上下水道工事における土木一式工事の具体例は以下の通りです。
- 公道下等の下水道配管工事:公道下の配管工事は、掘削・配管・舗装など複数の専門工事を総合的に管理するため、土木一式工事となります。
- 下水処理場自体の敷地造成工事:下水処理場という土木工作物を建設するための基盤を造成する工事は、土木一式工事に該当します。
- 農業用水道、かんがい用配水施設等の建設工事:これらは水道施設工事とは異なり、土木一式工事に分類されます。
3-3. ❌土木一式工事に該当しない工事
単一の専門工事のみを行う場合は、土木一式工事には該当しません。例えば、道路の舗装工事のみを行う場合は「舗装工事」、トンネルの掘削のみを行う場合は「とび・土工・コンクリート工事」など、それぞれの専門工事の許可が必要となります。
【まとめ】 土木一式工事は、公道下の配管工事や施設の敷地造成工事など、複数の工程を総合的に管理・調整する大規模な土木工作物工事を指します。
4. 上下水道施設工事の判断基準を徹底解説!
ここまで、3つの許可業種について解説してきました。ここでは、国土交通省の資料に基づいて、上下水道工事の分類をさらに詳しく見ていきましょう。
4-1. 🏡公共と民間、工事場所で区分する
上下水道工事の判断基準は、**「誰が発注した工事か」と「どこで工事を行うか」**が大きなポイントとなります。
公道下での工事は、規模の大小にかかわらず土木一式工事に分類されることがほとんどです。これは、公道という公共の場所で掘削から配管、舗装までの一連の作業を総合的に管理するためです。
一方、家屋や施設の敷地内で行われる配管工事は、原則として管工事に分類されます。これは、建物内の給排水設備を設置する専門的な工事と見なされるためです。
4-2. 🚰工事の規模・内容で判断する
工事内容も重要な判断基準です。
- 水道システムの中核を担う大規模施設 取水場、浄水場、配水池、下水処理場など、上下水道システム全体を支える施設の建設工事は水道施設工事に該当します。
- 小規模な配管工事 上水道の配水小管(小さな枝管)を設置する工事は、水道施設工事のような大規模施設とは区別され、管工事に該当します。
4-3. 🤔迷いやすいケースの判断基準
国土交通省の資料を元に、特に迷いやすいケースの考え方を整理します。
工事内容 | 区分 | 考え方 |
公道下での下水道配管工事 | 土木一式工事 | 公道という公共の場所での工事であり、敷地造成などの総合的な管理・調整が含まれるため。 |
家屋や施設の敷地内の配管工事 | 管工事 | 建物や施設に付随する専門的な配管工事であり、大規模なインフラ整備とは区別されるため。 |
上水道の配水小管を設置する工事 | 管工事 | 規模が比較的小さく、配管を主体とした工事であるため。 |
下水処理場内の処理設備を設置する工事 | 水道施設工事 | 下水処理場という大規模なインフラ施設の一部を担う工事であるため。 |
農業用水道、かんがい用配水施設工事 | 土木一式工事 | これらは「上水道・工業用水道」ではないため、水道施設工事には該当せず、総合的な土木工事として分類される。 |
浄化槽の設置工事 | 管工事 | 規模の大小にかかわらず、浄化槽によるし尿処理は「衛生設備」の一環と見なされるため。 |
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このように、工事の「場所」「目的」「規模」が、許可業種を判断する上で非常に重要な要素となります。
【まとめ】 上下水道工事の許可業種は、「公道か、敷地内か」「大規模なインフラか、小規模な配管か」という観点から判断します。
5. 具体的な工事例を挙げ、どの工事業種に該当するか当てはめ
ここまでの内容を、具体的な工事事例に当てはめてみましょう。
5-1. 例1:公道下の水道管布設工事
自治体から発注された、公道の下に新しく水道管を布設する工事を請け負いました。掘削、配管、埋戻し、アスファルトによる舗装までを一貫して行う場合、これは「土木一式工事」に該当します。 なぜなら… 公道という公共空間での工事であり、掘削や舗装など複数の専門工事を総合的に管理・調整する必要があるためです。この場合、単なる「配管工事」ではなく、複数の工程を含む大規模な工事と見なされます。
5-2. 例2:下水処理場内の配管工事
公共の下水処理場を新設する際、場内に汚水処理のための配管を設置する工事を請け負いました。この工事は「水道施設工事」に該当します。 なぜなら… 下水処理場は上下水道システムの中核を担う大規模な公共施設であり、その内部の設備を設置する工事は、水道施設工事の定義に合致するためです。
5-3. 例3:民間の住宅敷地内の給排水管工事
新築住宅の敷地内に、水道メーターから住宅建物までの給排水管を布設する工事を請け負いました。この工事は「管工事」に該当します。 なぜなら… この工事は公道ではなく、民間の住宅敷地内で行われるため、大規模な土木工事とは区別されます。また、建物に水を供給するための配管工事であることから、管工事の「給排水設備工事」に分類されるためです。
6. まとめ:上下水道工事の許可業種を正しく判断するために
上下水道に関する工事は、「管工事」「水道施設工事」「土木一式工事」のいずれかに分類されますが、その判断は工事の**「場所」「目的」「規模」**によって決まります。
- 公道下での大規模工事や敷地造成:土木一式工事
- 大規模な公共施設(取水場、浄水場、処理場)の設備設置:水道施設工事
- 家屋や施設の敷地内の配管工事や浄化槽設置:管工事
もし、請け負う工事がどの業種に該当するか判断に迷う場合は、自己判断せず、専門家である行政書士に相談することをお勧めします。正しい許可を取得することは、安心して事業を継続していく上で不可欠です。当事務所では、建設業許可に関するご相談を随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
建設業許可全体の手続きを確認したい方はこちらの解説をご覧ください👇他の許可条件も完全ガイド

7. 確認クイズ(上下水道工事)
上下水道工事の許可業種クイズ
上下水道工事の許可業種、正しく判断できますか?
ブログ記事の内容を振り返りながら、3問のクイズに挑戦してみましょう!
【第1問】
公道の下に新しく水道管を布設し、掘削から舗装までを一貫して行う工事は、どの許可業種に該当するでしょう?
- 土木一式工事
- 管工事
- 水道施設工事
【第2問】
民間の新築住宅敷地内で、水道メーターから建物までの給排水管を布設する工事は、どの許可業種に該当するでしょう?
- 土木一式工事
- 管工事
- 水道施設工事
【第3問】
公共の下水処理場を新設する際、場内に汚水処理のための配管を設置する工事は、どの許可業種に該当するでしょう?
- 土木一式工事
- 管工事
- 水道施設工事